蕪村と若冲

 

これも先日のお話ではあるのですが、滋賀県にあるMIHO MUSEUMで行われていた「蕪村と若冲」という展覧会を観に行ってきました。

 

与謝蕪村も伊藤若冲もともに同じ1716年生まれの江戸中期の京都を代表する絵師。

今回の企画は生誕300年を記念しての展覧会でした。

 

蕪村と若冲はまったくタイプの違う絵師でして、蕪村の画風はどこか庶民的なイメージを持ちました。

蕪村は俳人としても著名なのですが、人々の営みや自然を一筆でパッと描ききるような空間づくりが、作品を見ていて印象的だと感じました。

そして、あえて描かないところに何かの意味を持たせ、全体の雰囲気を醸し出している。

それはまさに「俳句」的な世界なのでありました。

筆さばきはやわらかく、しかし時に切り込むところはものすごい鋭さで描ききる。

緩急を織り交ぜた蕪村の息づかいを感じました。

 

それに相対して、若冲の画風は、精巧かつ大胆。


蕪村が描かないところに意味を持たせるのに対して、若冲はこれでもかというところまで細部を描く。

そしてその細部のひとつひとつがまるで万華鏡のように、全体の色彩を彩る。

とことんまで細部にこだわった画面からは今まで見たこともないようなものが立ち上がってくる。

それは時に鶏であったり草花であったりするのですが、

本物の鶏や草花を見る以上の迫力がびしびしと伝わってきます。

「本物以上の本物がここにある」ということでしょうか。

そんな若冲の世界観がまるで濁流のように観る側に迫ってきました。

 

 

同い年の蕪村と若冲。

同じ京都に居を構えながらも、両者の直接の交流を示す手紙などは存在していないと解説にはありました。

互いの存在を知りながらも、あえてある一定の距離感を保とうとしていたのかも知れません。

 

まったく毛色の違う両者の展覧会でしたが、大変見応えのあるものでした。

 

こういう面白い企画展がたくさんあるといいですね。